誘蛾灯を手入れする六根環境を考える会のメンバー=松阪市六根町で
写真=中日新聞
かつて夏の風物詩として水田に普及していた昔ながらの「誘蛾(ゆうが)灯」を、三重県松阪市六根町の住民有志でつくる「六根環境を考える会」が、地元の田園に復活させた。夜にゆらめく赤い火が実り始めた稲穂を照らし、幻想的な雰囲気を醸している。八月上旬まで。
誘蛾灯は、光に集まる昆虫の性質を利用して、稲の茎を食べるウンカやニカメイガを殺す灯火。同会の沢村茂代表(68)は「昔は夏になればどこにでもあった。ところが、農薬の普及に伴って少しずつ姿を消し、五十年前にはまったく見かけなくなった」と振り返る。
同会は、地元の機殿小児童から募った環境標語をのぼり旗にして地域に掲げるなど、環境保全活動に取り組んでいる。誘蛾灯の復活は、熊野市紀和町の丸山千枚田にたいまつをともす伝統行事「虫おくり」から着想を得た。沢村さんは「景観づくりのほかに、減農薬も同時に実現できると考えた」と狙いを話す。
誘蛾灯はすべて会員の手作り。火を付ける芯を空き缶や瓶に入れた灯油に浸し、防火のため、その容器を水を入れた受け皿の上に置いた。計五十五個を作り、田園の間に延びる道路沿いに約二十メートル間隔で設置した。誘蛾灯を置いた道路の直線距離は、最長で約二百メートル。午後七時から会のメンバーが点灯し、朝には消えるように灯油の量が計算されている。雨天時は点灯しない。
設置後、沢村さんには思いがけずうれしいことがあった。誘蛾灯を知る地元の年配者が毎晩、点灯する会のメンバーに「懐かしいねえ」と声を掛けてくれるようになったという。沢村さんは「実際に目にしたら、その美しさにわれながら感動してしまった。来年以降は誘蛾灯の数を増やして毎年続けていきたい」と話している。
中日新聞より転載
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